あなたはなぜ開業するのですか?
1.あなたはなぜ開業するのですか?
このホームページのこのバナーをクリックされたということは、
既に開業を決意され準備にかかっておられるか、ここ数年の内に開業を志しておられる方であろうと思います。
ところで、皆さんは、なぜ開業しようとお考えなのでしょうか?
これから開業しようとされている何人かの方々にお聞きしてみますと、次のような答えが返ってきました。
- ・現在よりも高い収入を得たい
- ・開業医として社会的なステータスを高めたい
- ・誰かに使われるのではなく自分の好きなように仕事をしたい
- ・より優れた治療サービスを提供し、社会に貢献したい
- ・家族や友人が勧めてくれるから
- ・自分が大学に入ったときから漠然と思っていた
- ・一定レベルの治療技術が習得できた
- ・いい物件を見つけることができた
- ・今勤めている医院の給料が低い
- ・院長と診療方針が合わない
- ・現在の医院に将来性がない etc
この答から分かるように、開業の動機には積極的なもの、やむを得ずといった消極的なものなど、各人によって様々あるようです。
ここでぜひ確認しておいて頂きたいことは、
新規開業は、自分の夢を実現する大きなステップである
ということです。
言うまでもなく、開業すれば、勤務医の時にはなかった大きな可能性が開けて来ます。例えば、自分の思うような方針で治療ができます。社会的ステータスも高まります。うまくやれば収入も飛躍的に上がります。そして、そのことが、自分の「夢」の実現に大きく繋がって行くはずです。
しかし、大きな可能性は一方で大きなリスクを背負っています。患者が来院しなければ、来院してくれるようにいろいろな施策を考え、取り組んでいかなければなりません。資金が足りなくなれば、金融機関に融資をお願いすることも取り組まなければなりません。それは、勤務医時代にはなかったことです。そうした困難にぶつかった時に、それを乗越える支えになるのが、開業にあたって思い描いた「夢」なのです。
尚、これらの「夢」や「開業の位置付け」については、「ライフプラン」としてぜひ整理してみて下さい。その作り方には、様々なものがありますが、その一例を後述していますのでご参考下さい。
さて、開業にあたって、もう一点是非確認しておいて頂きたいことがあります。
それは
開業するからには、必ず成功させるという決意で臨む
ということです。
「何とかなるだろう」という甘い見通しで開業し成功することは、今日では、極めて困難になっています。
明確な経営方針や適切な投資計画、収支計画がないままに、あるいは基本的な経営知識がないままに開業に踏み切り、業者任せに高額の医療機器を導入したものの、思ったように医業収益が上がらす、運転資金にも困って次々に借入れを行い、膨大な額の利息を抱え込んで倒産といった最悪のパターンにもなりかねません。
従って、「どんなに困難があろうとも必ず成功させる」という決意を持ち、以下で解説する歯科医院経営の今日的な成功要因、医院経営の基本的なノウハウ、開業に向けての具体的な準備事項などについて理解を深め、粘り強く開業準備、医院経営に取り組んで行くことが求められます。
2.開業とは事業家になること
開業を志しているほとんどの方々は、今どこかの医院で勤務医として働いておられることと思います。そういう方々にとって、開業とは何を意味するのでしょうか?勤務医も開業医もやることは同じなのだから、結局これまでやってきたことの延長で考えればよい、と仮にお考えだとしたら、それは大きな誤りであると言わざるを得ません。何故なら、開業医と勤務医は、その職務、役割が大きく異なるからです。
それでは開業医と勤務医の違いはどのようなものでしょうか?
以下で整理してみましょう。
まず、第一の決定的な違いは、
勤務医は、一定時間勤務することによって、毎月一定の給与が支払われますが、
開業医の場合、基本的には患者の治療によって得た医療収入から様々な医療経費を差し引いた残りの金額が自分の収入になる。
ということです。
このことは、患者が多く来院し医業収入が増えれば、自分の収入も多くなる反面、患者が少なくなれば、自分の収入も減るということを示しています。
第2の違いは、第一の違いの裏返しですが、
勤務医は、自分が担当する業務の範囲で責任を持てば良いが、
開業医は、医院の経営全体に責任を持たなければならない。
ということです。すなわち、医院の存続、発展に向けた各種施策の立案と実施に責任を持たなければなりません。
第3の違いは、第一、第二の前提に立って、
開業医は、自分自身の考え方・方針によって医院の経営方針を決め、実施ができること
です。
言わば、一国一城の主として、思う存分腕を奮うことができるということです。
ところで、これらの違いは、どうして生まれてくるのでしょうか?それは
開業とは、事業家になることである。
という認識に立てば自ずと明らかになることです。
それでは、「開業とは、事業家になることである」と捉えた場合、どのような資質、能力が求められるのでしょうか?
大別しますと、次の三項目を挙げることができます。
1)医療に対する強い情熱・意欲を持ち、明確な医療理念、経営理念、診療方針を持っていること
2)診療に関する専門的技術・知識のみならず、医院経営に関する経営知識を有していること
3)自分が立てた経営方針を推進する行動力とスタッフに対する強いリーダーシップ力を有していること
開業するにあたって求められる資質・能力について述べましたが、仮に十分でないと判断されるのであれば、今からその資質や能力を向上させることに計画的に取り組むようにして下さい。
尚、以下に、開業医として必要な資質・能力をチェックリスト風に整理しておりますので、一度チェックしてみると良いでしょう。また、既に開業されているドクターもチェックしてみることをお勧めします。意外とチェックが付かない項目があると思いますよ。
<開業医に必要な資質・能力チェックリスト>
1.医療に対する情熱、意欲とポリシーを持っているか?
- □自分の人生観、夢をよく理解しているか
- □医療を自分のライフワークと考えているか
- □医療に対する強い情熱、使命感を持っているか
- □医療のあり方を改善しようという意欲をもっているか
- □開業する目的、目標が明確になっているか
- □確固とした診療方針、経営方針を有しているか
2.医療の専門的技術・知識及び経営知識を有しているか?
- □医院経営はサービス業であることを理解しているか
- □サービス業の特徴及びポイントを理解しているか
- □他に負けない診療技術・知識を有しているか
- □最新の診療技術を研究しているか
- □開業資金計画は正確に立てられるか
- □予測損益計画が立てられるか
- □資金調達の方法を知っているか
- □立地条件のポイントを知っているか
- □立地調査・診療圏調査の進め方を知っているか
- □競合医院の経営状態が分析できるか
- □マーケティングとは何かを知っているか
- □認知率・選択向上策としてどのようなものがあるか知っているか
- □中断・転院防止策としてどのようなものがあるか知っているか
- □愛顧患者の作り方について知っているか
- □スタッフの採用・教育方法を知っているか
- □経理・税務の基本的な知識を持っているか
- □事務処理の流れについて理解しているか
3.行動力と強いリーダーシップ力を有しているか
- □自分のために決めたことを確実に実施しているか
- □自分の1週間分のスケジュールが常に明確になっているか
- □帳簿付けはど細かい事務処理を厭わずにできるか
- □自分の考えを相手に正しく伝えることができるか
- □患者やスタッフを説得する自信があるか
- □従業員の不満や不安を親身になって聞けるか
- □薬品卸、材料卸などの業者と良好な付き合いができる自信があるか
- □夫婦関係は円満か
4.開業にまつわる様々な不安
いざ、開業を具体的に考え出すと、いい立地・物件は見つかるだろうか、お金は調達できるだろうか、患者が来てくれるだろうか、安定した収入が確保できるだろうか、スタッフが確保できるだろうか、あるいは定着してくれるだろうか、などなど心配や不安が次々に起こってきます。
ここで初めて、勤務医の気楽さと開業医の煩わしさが、具体的に意識されることになります。もしもこの段階で、逡巡するようであれば、再度、開業への決意を固め直して下さい。
ところでこれらの不安は、多くの場合、開業プランが詳細に検討されていないために生まれてきます。あれこれ悩むよりも次のチェックリストで一度チェックしてみて下さい。
開業にあたって検討しておくべき事項をチェックリストとしてまとめたものです。
勿論、まだまだ不確定要素が多く、完全な開業プランはできませんし、様々な不安も当然に残ります。
しかし、その不安は漠然としたものではなく、開業に向けての取り組むべき行動が明らかになった段階での不安です。これまでの不安とは質的に変化しているはずです。
<開業にあたって検討すべき事項チェックリスト>
第1講 開業を志される方々に向けて、医院開業で成功するために
- □自分のライフプランが作られているか
- □開業する目的、目標が明確になっているか
第2講 開業基本プランの作成
- □経営理念、診療方針が明確になっているか
- □どれくらいの初期費用がるか算定したか
- □資金をどこで、どのように調達するか明確になっている
- □資金の返済計画は無理のないものになっているか
- □実現性の高い予測損益計画が立案されているか
第3講 立地選定と診療圏調査及び医院設計・施工
- □開業予定地が明確になっているか
- □開業と予定地の診療圏調査は実施したか
- □医院設計の方針が明確になっているか
- □医院設計は適切な設計事務所に依頼しているか
第4講 医療サービス内容と患者吸引策の検討
- □医療サービスの内容について明確になっているか
- □新患の確保から定着へ向けての具体的な方針が検討されているか
- □オープニングイベントが企画されているか
第5講 人材の採用と活用
- □スタッフの採用活動を実施しているか
- □スタッフの教育計画が立てられているか
第6講 院内管理体制の整備
- □患者の受付から治療終了までの業務の分担が明確になっているか
- □業務の実施状況を管理する体制ができているか
第7講 新規開業の届出・申請手続き
- □開業にあたって必要な届出、申請の準備ができているか
ここから先は新日本総合税理士法人 浦和支所の「医院開業勉強会」にて具体的に進めて行きたいと思います。
弊支所では、毎月1日いずれかの木曜日に上記7講のうちのいずれかひとつのテーマで、セミナーを開催しております。テーマの順序は前後いたしますが、どこから参加されても、全7回受講していただければ、開業に必要な予備知識は全て体得できることになります。毎月いずれかの週の木曜日午後1時30分から4時30分まで行っております。各月の具体的な日程につきましては、お問合わせください。
参加費用は全7講で165,000円となります。